絵からはじめる劇づくり部も本格的な創作活動に入っていきます。
3月3日(金)は、演劇ワークショップ②が行われました。
前回の合同ワークショップを経て、講師の柏木陽さんが台本案を作ってきました。
「皆さんから絵本のお話を聞いたり、絵を見たりして、僕がイメージしたことを台本の形に落とし込みました。今日は、“こんな風に考えています”と話をするので、それを聞いて“こうなったらいいな”ということがあったら言ってください。」と柏木さん。
台本は、オープニングと3つの場面、そしてエンディングといった構成になっています。
まずはオープニングについて
柏木さん「今のところ、1人の人が出てきて、筆を持っている。それを“えいっ”てやると点ができて、さらに“えいやっ”とやると線ができて…どんどん点と線が増えていく。オープニングはそんな感じで『天地創造』をやろうかなと思っています。何もないところから点と線がドカドカ出てくるみたいなのがいいです。」
1つ目の場面はどんな感じかというと…
柏木さん「生命が生まれて滅ぶまでをやろうと思います。一滴水が落ちると細胞みたいなのが生まれて、種から芽が出て、生命ができてきて、大きな動物、人間も誕生して…。さらに槍がペンになってフラスコになって銃になりミサイルになり、爆発が起こって終わり、みたいな。できるかどうか分からないけど、とりあえず台本に書きました。」
さらに2つ目は…
柏木さん「ぴちょんと水が落ちると菌類が生まれます。なんでそうなったかというと、この絵本を見て、キノコが生えてると思ったんです。別のページを見ると雷が鳴っているように見えて…雷落ちるとキノコが生えるって言いますよね?胞子も飛んでるように見えて。そう思ったら別の絵本を見ても、にょきにょき生えているものが全部キノコ、『キノコと人』みたいに見えちゃったんですよ。それなら『キノコで人』でもいいかなと思って。ということでこの章は菌類が生まれて、のびて、『粘菌人類』というのが誕生することにしました。『粘菌人類』が踊ってお祭りをするっていう風にしようと思っています。踊っているうちに干からびるなり、バラバラになるなりして滅ぶ。」
3つ目とエンディングは…
柏木さん「3つ目の場面では禅問答みたいな場面を作ろうと思っています。で、全部の対話が終わったところで『点と線』はパタパタ倒れています。エンディングは、筆を持った人が一人で去っていく。でも『点と線』は倒れていたはずなのに再び動き出す、みたいなことで終わりにしようと思っています。」
それぞれのパートで、こんな表現にしようと思っているとのこと。
OP. 天地創造→音響や照明をたくさん使う
1. 生命がうまれて滅ぶまで→影絵とか人形劇
2. 菌類が生まれる~粘菌人類が踊る~ほろぶ→オノマトペ
3.
禅問答~点と線が倒れる→セリフによる対話
ED. 筆を持った人が1人で去っていく~でも点と線は再び動き出す
柏木さんから台本全体のイメージをお話していただいた後は、近くの席の人同士で“こうなったらいいな~”とお話をしました。
「こういう人がいたらなんか面白いんじゃない?」
「あれってどういうことなんだろう…」
「技術的にはどうなんですか?」
皆さん様々な角度からお話をしているようでした。
お話の中から出てきた意見や案を最後に全員で共有。
「今回のワークショップは『アーティストの頭の中をのぞく』ってこともあって、皆さんに情報を全部お伝えして皆さんの意見を聞いた上で、それを取り入れるかどうかは、僕と長峰さんに託されています。なので逆にいうと、皆さん遠慮せずに意見を言ってください。無理なものはちゃんと無理っていうので。」と柏木さん。
色々な意見が出る中で、館の技術スタッフが入っていたグループではこんな話が出たそうです。
部員さん「このグループは、(館の技術スタッフがいたので)舞台・音響の話ばかりしたんですけど…。例えば天地創造だったら音響のドカーンや照明のビカビカビカ!っていうのが強いと思って。ここは茅野なので八ヶ岳が全部噴火して火柱を立てたいな、なんて。技術スタッフがどこまでやるかというのもありますが…。」
柏木さん「ぜひ‼ものすごく期待してますから!音の暴力、音量が大きいんじゃなくて、色々な音がどんどん移り変わっていくみたいな…。普段、音も照明もあまり使わないんですけど、それだと皆さんのためにならないと思うので、今回はなるべく色々やってください。そのことに参加者さんが触れることで、“そうなるのね!”と体感することも今回のワークショップの役割だと思ったりしています。」
音響や照明がどんな風になるのかも楽しみですね。
柏木さん「動きや音も皆さんと一緒に作りつつ…だいぶ今回の僕は横暴だと思います(笑)。意見を出してもらって全却下ということも平気でするのが僕の今回の役割なので。普段のワークショップだったら出してもらったアイデアに対して責任を持ちます。でもそうすると『僕の頭の中』にはならないので、今回は、“意見は聞いたけど全却下です”ということもあるかもしれないです。」
また、その話を聞いた上でこんな意見が…
部員さん「怒られるかもしれないんですけど、粘菌人類って聞いたとき、私たちのグループでは『年金』の方を思い浮かべちゃって…。」
柏木さん「よし来た!待ってました!まさにダブルミーニングですよ!すごいくだらないですけど、ダブルミーニングには必ず意味があるんですよ。『粘菌人類』で菌類の話していると思ったら年金の話になっている。で、禅問答のシーンで、“人の金で生きることは悪か” “いや人の金以外で生きている者はいるのか”みたいなことを入れたりしても面白いですよね。」
舞台美術ワークショップで作った絵本から発想を得て、柏木さんが書いた台本。
その中に思いがけないダブルミーニングを見つけて、ここからさらに面白そうなことができそうな予感もした今回の演劇ワークショップでした。
舞台美術と合わさってどんな演劇になるのか今から楽しみです。
(マネージャー・まりこ)
―今回の台本、ビジョンがすごく壮大で、ある意味ゴージャスで驚きました。(柏木)今回の『絵からはじめる劇づくり』は、ぼくのアイデアやイメージから始めないで、ほかの人のアイデアやイメージがあって、それとどう付き合っていくかっていうところから始まっていて、それはふだんのワークショップでのぼくのふるまいと近しいんですよ。
前回、オンラインでつないでやってたときに、みなさんの絵を見て話を聞きながら、ずっと文字打ちしてたんです。こんな感じで(キーワードのようなことばがぽつぽつと打たれているメモのようなもの)。あそこでもう7〜8割決まってて、だから台本に落とし込んだときには、もうほとんどできてるんですね、ぼくのなかで。
―そのメモから「この流れがいけるな」と思って、そのように書いたんですか?
(柏木)これが不思議なんですけど、ぼく、書いたあとに気づいたんです。先にないんですよ。「こういうことだからこう書こう」じゃなくて。言ったじゃないですか、無意識に触れないと創作できないんですよ。
―「無意識に触れないと創作できない」!
(柏木)メモは多分、無意識をつなぎとめるために、無意識に刻印するためにしてるんです。実を言うとね、台本を書くときにメモは見てないんですよ。
前回のワークショップが終わって(ネットを)シャットダウンしたあと、「どうするといいのかなー」って思いながら、もう(台本を)書いてるんです、粗いものを。で、書きました。で、今日、茅野に来る電車のなかで見返しながら、皆さんにプレゼンするんだけど「なんだろうな」って思ってて、で、楽屋で「そうか、そうだったのか」って気づいた。だからたぶん、皆さんに説明する必要がなければぼくはまだ気づいてなくて、ふだんは稽古中に気づくんです。知っててやってるんじゃなくて、稽古と同時進行で気づいていくんです。だから、つくっているんですよ。
―気づいていくから、つくっている、という。
(柏木)「こうなるから、こうつくりますよ」っていう思考だと発見がないから、その稽古は苦しいんです、ぼくは。なんだかわからないけど皆さんで手探りしていきますねっていう稽古の仕方をしないとしんどくて。
皆さんの考えてることってこれくらいゴージャスなものですよって表した、イマジネーションとしてとても豪華で、あんなに盛りだくさんなシーンがつづくようなものは、ぼくはふだん書かないですよ。だけど、まあいいんじゃないかな、今だったらつくってもいいかなって思えて。これに関しては多分、今後ぼくに気づきが訪れると思います。
ワークショップでつくっているのはなんでかというと、ぼくの思った通りにならないから。だから面白い。違う発想を持ち込む人がいて、ぼくが思ったことをやらない人がいて、だからワークショップで形をつくっていく。今回もつくりながら気づくし、つくりながら違うことがうまれていくんだろうと思うんです。それが多分、みんなで楽しくなるために必要なのかもしれない。
―それぞれ違う人同士がやりとりしてつくる…っていうのは、これまでも市民館でやってきているのですが、今回は柏木さんの「あたま」の磁場みたいなものに皆さんも引っ張られて、楽しみ始めているという感じがみえました。
(柏木)今は実際の作業に落とし込んでないので、ここから皆さんと長峰さんに台本をお渡しして、長峰さんの作業が始まる。長峰さんの作業で「もの」ができてくると、ゆるぎなくそれはあるので、それとどう格闘するかってことになってくるかな、と思いますね。
あと、市民館のスタッフの皆さんには腕試しの場と思っていただければ。市民館って、管理的な目線と創作的な目線の両方があるといいホールなのかなって思うんですよね。お手盛りのことだけで終わらず、そこにどう応えていけるかっていうのは、苦しいですけど、でも楽しいはず。新しい人も増えているので、ベテランの知恵や経験を借りて、がんばって、「こうか!」って思う体験をいっぱいしていただければ。そのための、ある種のゴージャスさであり無茶振りでもあります(笑)。
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