今回は第2部「粘菌人類」。菌類が生まれて滅びるまでを、実際に体を動かしながら作ってきます。
■発酵から拡散までのシーンづくり
菌が発酵して、増殖して、成長して、移動して、胞子が飛んで拡散して…。拡散した胞子がまた発酵して、増殖すると今度は粘菌人類に変化して、踊り始めて…という流れ。
まずは3名ほどのチームに分かれて、『発酵』、『増殖』、『成長』、『胞子』の中から1つ選び、その“動き”と“オノマトペ”を考えていきます。
私の入ったチームは『増殖』を選んだのですが、「増殖ってどんな動き…?」とみんなで頭をひねります。
するとチームの一人が「発酵と言えば…」とお酒造りの工程を話し出し、そこからもう一人のも「それならこんな感じかしら…」と動き始めます。発酵から増殖の動きの流れをイメージして、さらに増殖の動きを深堀りしていきます。
まわりを見渡してみると、どのチームも徐々にできてきた様子。各チームどんなものができたか発表していきます。
「基本いいです。」と柏木さん。動きやオノマトペを少し調整して振り付け完成です。
そうしたら今度はそれぞれのグループから代表者を一人選出。
柏木さんの指示のもと、代表者が今の一連の構成で動いてみます。
どんな流れか見えてきたので、トータルで何分かかるかもう1回通しでやってみました。
大体3分半。
「始まる流れとその後の流れを考えるとこのくらいの長さでよさそう」と柏木さん。
柏木さん「すごくいいということだけ言っておきます。しんどいでしょ体。しんどくない方向でいこうと思っていたけど、皆さんの考えた振り付けが体を上下に動かすもので、あれでゆっくりめに動くって、観てる方はあんまり感じないけど、実はしんどい(笑)。あまりにもしんどそうだったら変えるけど、基本的にはこれでいきたいなぁって感じですね。」と柏木さん。
さらに、「今日のタスクは終了って感じなんですけど、せっかくだから僕が何でこうしたのかって話をしましょうか。」と、第2部がどうしてこういう方向になったのか、お話してくださいました。
■今日の流れ「柏木さんの頭の中」
「今回のワークショップって、期間があるようでいてあんまりないんですよ。だから覚える作業があるとできないかもしれないので、自由度のあるものがやりたいと思って。せっかく舞台美術も盛大に作ってるし、粘菌人類でっていうのまでは台本を書きながら考えていた。それと、オノマトペでケチャみたいなのが多重録音で作れるなっていうことも考えていたんですが、実際に録ってみないと分からないじゃないですか。で、録ったら想像以上によかったんですよ。これはスタッフさんがすごく意図を汲んでくれたっていうのと、皆さんが出したオノマトペが面白くて、思っている以上にうまく進んだので、それならダンスにするかなぁって…。」
さらにこういう機会なので…と、質問タイムもありました。
新入部員さんから
「最初から参加してる方と、単発で参加する方もいると思うんですけど、始める前に皆がなじむようなきっかけ作りって、何かやっていたんですか?入ってきたときすごくいい雰囲気だったので。」と質問。
柏木さん「してない…ですよね。とりあえず、今回に関してはしてないですよね。」
\いつもしてないですよ~/と部員さんから声が。
慣れることがいいことばかりではなく、ちょっと緊張感がある方が慎重にできる…ということもある、と言います。
「緊張感がなくて、忘れちゃうな…」という部員さんのつぶやきに、
「忘れちゃうこと、それも含めて創作だから。」と続けます。
柏木さん「今ここにある状態を無視せずにやりたい。慣れてもらうとか、ほぐしていくって、ある種それを無視させてしまっている。今ここにあることを認識して、そこから“私だったらこうしよう”とか、“あなただったらこうするのね”ということを、基本的には尊重しながらやりたいので。」
最後に柏木さんの頭の中もたくさんのぞけたワークショップとなりました。
たくさん創作してお話を聞いて、盛りだくさんの90分でした。
新しい部員さんも加わって、よりにぎやかなワークショップになっていきそうです。
(マネージャー・まりこ)
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2023年3月16日(木)演劇ワークショップ④
講師インタビュー
「柏木さんに聞く!」
―今日、前半45分でシーンができあがったのは驚異的で、参加者のみなさんはそんなつもりはないと思うんですが、本当に濃密な時間に参加していたと思うんです。(柏木)90分でできればいいと思ってたんだけど、成長促進剤みたいな人たちがいて(笑)、その理解度や創作への速度を突破口にして、「できる」がつながっていったというか。その分、後半が繰り返しの練習に使えたのもすごく良かったなと思ってます。初めての人もいたからこれまでの流れを解説して、最後には手の内まで話してしまって。まあ、すべて「図らずも」で、脳みそ汗かきまくってましたけど(笑)。これで真ん中ができたから、前後の1場面と3場面もある程度ここから派生させて考えていくことができる。核ができましたね。
―創作に慣れている人、久しぶりに参加した人、今日初めてという人もいて、グループごと進め方もそれぞれだったのですが。
(柏木)慣れてる人たちにはこれまでやってきたことの蓄積があって、参加者のなかで理解の差ができるじゃないですか。でもこの差は悪くないと思うんです。差を見つけるって成長だから。それこそ今日初めての方が、だからこそ見えることをフィードバックしてくれましたけど、それはおぼつかない状態じゃなければ現れない言葉だから。で、今のその状態をどう肯定して、先へ進むかっていうことだと思うので。
―差が見えると、つい手を出してしまいそうになるのですが……
(柏木)サポートはいるんですけど、支えすぎると一人で歩かなくなるんですよ。自分たちでできる力を奪ったら、それはスポイルでしょって思うし、自分たちでできるでしょ?っていうのも必要じゃないですか。でもそれも、安心していられるから「やってみようかな」っていう選択ができるんですが。
―今日は柏木さんが以前解説してくださった「ワークショップ型」の進行でした。
(柏木)つくってる様子だけ見て、支えないとってとこだけちょっと口を出して、あとはできるがままに任せてみなさんの後ろに回ってる感じ。できあがって「すごい!」って言ってるだけ(笑)。事前に考えたことだけは示してますけど、それは先週から作業してくれていたスタッフさんがいたから、目算を立てて「こういう流れにしよう」って決められたので。そういうのも含めて、今日は総合力ですよね。先に動いて、支えてくれてるスタッフさん、先頭を走る参加者、みたいな。そういう総合力で、45分という時間にまとまったってことじゃないですかね。
ぼくは、ワークショップの形って副産物が豊富に出るっていうのがいつも面白いと思っていて。だから主目的は軽いほうがいい。「市民のつながりができたよ」だったり、いろんな副産物がいっぱい出てくるから。前回の「オノマトペ考えてね」ってところから、参加者が今つくろうとしている世界観をどんどん妄想して、豊かにしといてくれているっていう副産物があるから、今日の活動も早く進んだってことだし。目算誤ることもあるんで何とも言えないんですけど。本当に薄氷を踏む思いなわけですよ、毎回。
―方向性が開かれていると豊かさの部分が違ってくる。それも場合によることもあるし、どこにでも当てはまるような理論というようなものではないんだけれど。
(柏木)現場ってそうですよ。現場がどうなってるかを理論化したいから理屈を考える。整合性がある考え方はこれだな、みたいなこと。でも現場っていつでも例外しか生まないんですよ。その例外とどう付き合うかだから、まあ、しんどいっすよ(笑)。
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