2023年3月10日金曜日

演劇ワークショップ③

3月10日(金)、演劇ワークショップ③が行われました。

前回の演劇ワークショップでは、講師の柏木陽さんが作った台本の内容を皆で共有して、“こうなったら面白そう”などなど、意見を出しあい発表しました。

今回は、前回の皆さんの意見も踏まえて柏木さんがさらに整えた台本を配布。その中のいくつかの場面を具体的に考えていく作業を行いました。

「今日は2部と3部を皆さんと作っていきたいです。」と柏木さん。

2部の『粘菌人類』のオノマトペ、3部の禅問答を考えていきます。

「先にオノマトペを考えてもらって、今日は試しにこれを録音してもらいます。そして3部の禅問答を考えている間に音響さんに曲にしてもらおうと思っています。無茶苦茶なことを言っていますが、要するに音が重なるとこうなるということを体験してもらった方が分かりやすいと思って。」


■第2部 オノマトペ

オノマトペとは、例えば『キラキラ』や『ワンワン』など、擬音語や擬態語と呼ばれているものです。

「今回は菌類が出てくる感じのやつがいいなと思っています。どちらかというと、現実にない感じのオノマトペがいいです。例えば、『 あ″ 』って実際には発音できないけど、何となく近いものは発語できるじゃないですか。自分たちだけで分かる発語記号でもいいです。ほかの人にやってもらうわけじゃないので、こういうのが面白いんじゃない?という感じで色々なオノマトペを思いついていただけると嬉しいです。」


柏木さんのお話を聞いて、さっそく3チームに分かれてオノマトペを考えていきます。

案が次から次へと浮かんでくるチーム、どんな音の重なりにできそうかまで考えはじめるチーム、菌らしい音とは…?と話し合うチーム…どのチームもだんだんと考えが浮かんできて、会場の中に不思議なオノマトペが響き始めます。

今回は音響スタッフが、別の部屋に録音室を作りました。

できたチームからそこで録音です。


各チーム録音の様子



この録音を、音響スタッフが1時間ほどで3つの曲にしていきます。柏木さんの希望はバリ島のケチャという音楽のイメージ。


■第3部 禅問答

どんな風になるのか楽しみにしつつ、待っている間に3部の禅問答を考えていきます。

「問いと答えになるように皆さんに考えていただきたいですが、わざと問いに対して問いで答えるということもありです。問われると答えなきゃいけないと思うじゃないですか。でも禅問答の本を色々読んでみたらほとんど言いがかりみたいなんです。」

禅の教えの一部を柏木さん流に簡単にまとめるとこんな感じだったそうです。

●不立文字…お釈迦さんの教えが字になるわけない

●教外別伝…教えの外に伝えたいことがあるので、文字で書いてある教えはそこに行くための入り口でしかないからそこまでこだわらなくても…

●以心伝心…言葉にならないところに教えがあるので、言葉以外のところに伝えるしかない

柏木さん「異常な世界でしょ?禅問答までいくと問いの答えになっていないようなことが答えなんですよ。だけどそれは、お互いの状況からしたらそうとしか思えないよねっていうことを返しているから、それが答えとして成り立っているんです。シチュエーションや背景込み。それが禅問答。」

さらに「一応テーマは、生老病死です。四苦八苦って言葉があるじゃないですか。四苦というのは生老病死のことで、八苦は愛別離苦や怨憎会苦、求不得苦…みたいなモビルスーツの名前みたいなのが続いていきます。ようは人間の一生に起こるような出来事は苦として現れるということです。なので例えば“なんで稼がなきゃいけないんだ”とか、“なんで満員電車に乗らなくてはいけないのか”とかでもいいです。」と例を出しました。


こちらも先ほどと同じチームで考えていきます。

オノマトペのときとは打って変わって、皆さんじっくり言葉を紡いでいっている様子。


何分か経ち、どんな問答が出たのか発表していきます。

「問答になっていなくても構いませんよ」との柏木さんの言葉で、どのチームもたくさんの案を出していきます。

最終的にはホワイトボードの一面すべてを埋め尽くすくらい多くの問答が生まれました。


「『なぜ悪いことを考えるのか』って問いは、『なぜ悪いとされているのか』という問いも返せますね。」と柏木さん。

部員さんたちは「そういう発想もあるのか…!」と感嘆します。

出てきた言葉を最初から見ていくと、まずは「問答」が繰り返されて、途中から答えのない「問」だけになり、最終的に出てきたのは「答えを求めてはならない」でした。このまま物語になりそう。

「何という構成力。こんなに美しい構成ができるのかと感動しています。一般に見せる訳ではないですが、例えば見せたときに波紋を生むような表現が好きなんです。」と柏木さん。

「こういうことをやったときに、答えをちゃんと見せてほしいという人もいます。これはバランスです。エンタメに振ることもできるし、問いを深くすることもできます。何で決めていくかはアーティストの個性や観客層です。」と加えてお話されました。


さて、禅問答を発表している間にオノマトペの曲が完成しました。

録音した順に聞いていきます。

最初は、オノマトペがぽんぽん出てきたチームの音楽。ユニークなオノマトペをたくさん考えていましたが、音楽になるとよりユニークに。

次のチームは、自分たちで音の重なりもイメージしながらオノマトペを考えていたので、実際にできたものはイメージと少し違っていたかもしれません。ですが、チームの皆さんも思わず笑顔になる音楽に。

最後のチームは男性が多めだったのこともあり、他のチームより渋めの響きに。それがなんともいえない味があって面白いです。

皆さん興奮、大盛り上がりです。


柏木さんも「だいぶいい感じの方向性が見えてきたので先行きが本当に楽しみです。次回は、明日明後日の舞台美術ワークショップで作られていくセットの中で、どのように動くかとかが出てくるといいのかな。2部と3部はだいぶアホなことができそう。特に2部はヤバそうですね(笑)。順調に育ってきているので、今から楽しみです。」と笑顔を見せました。


短い時間の中で、濃い創作活動を行った今回の演劇ワークショップ。

次回はどんな風に進化していくのか今から楽しみです。

(マネージャー・まりこ)


* * * * * * * *

2023年3月10日(金)演劇ワークショップ③
講師インタビュー

「柏木さんに聞く!」

―今日、みなさんのオノマトペから曲をつくった市民館の音響スタッフがとてもいきいきしていて、階段をひとつ上がったようにみえました。持てる力を出した達成感というか……
(柏木)
実感を得られているってことですかね。前も話しましたけど、ここのスタッフワークはもっとチャレンジできるところがあるだろうな、というのを含んで台本を書いているので。市民の人も、市民館の人も、われわれも楽しんでできて、そこにちょっとでも学びがあれば。

―「禅問答」でも、柏木さんがスッと示唆するところがあって、みなさんも「気づいてなかった……」ってうなずいていたり、すごくいい刺激になっていると思います。それに、編集されたオノマトペの録音を聞きながら「自分たちが考えていたのと違う……、面白いじゃん!」って喜んでいる感じもあって。長峰さん、柏木さんのいう「変容」の部分ですが、元のものに別の手が加わり変容して、それがフィードバックされて次の段階へいく、というのが感じられます。
(柏木)
レヴィ=ストロースが構造主義にいたる過程で見つけたのが、人は交換がしたいんですって。たとえば今回でいうと、録音したものを構成どおりにつくることもできるけど、それは交換になってなくて。録音された素材がミックスされて違う形になってこっちにやってくる、それが交換になっているんです。自分たちが思ったものをつくるっていう喜びもあるんだけど、変数がかかって戻ってくるってことで、喜びが大きくなるんじゃないかなって思うんですよ。今日はそういう日だったような気がしていて。

―「変数がかかって喜びが大きくなる」!
(柏木)
出してみて、預けてみて、戻ってきたら「そうなってるのか」って、偶然の発見を楽しんでいる。変数がかかって喜びに変わるっていうのが好きな人たち。長峰さんもぼくもそっちのタイプなんだろうな。
最近思うんですけど、アーティストって2種類いて、思ったとおりに「こうつくる」っていう人と、いろんな人たちに投げて「こんなになるんだ」っていうのが楽しい人。「こうつくる」っていうのも喜びだけど、満足しないでつづけるか、そこまでいって「よし」って思うか、それしかなくなっちゃう。「こう変わるんだ」っていうのが楽しくなっちゃうと、「じゃ、今度これは?」ってずっと面白がれるし、ずーっとやっていられる。それは楽しいですよね。
明日・明後日がどんな活動でなにができてくるのか楽しみだし、それを受けて来週2回でぼくはどこまで仕上げなきゃいけないのかなって(笑)、楽しみです。

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