2023年1月19日木曜日

舞台美術ワークショップ②


119日(木)、舞台美術ワークショップ②が行われました。

今回は、前回のワークショップで描いた「点と線」の作品を材料に絵本を作っていきます。

まずは講師の長峰麻貴さんから今日の内容についてお話していただきました。

「皆さんが前回描いた絵、300枚くらいあったみたいなんですよね。これらを使って文字のない絵本を作っていきたいと思います。できた絵本を皆さんにプレゼンテーションしてほしくて、けっこうやることが多いので、さっそく作り方を紹介していきます。」



「文字のない絵本ってどういうことかというと…」と参考に見せてくださったのは、前回のワークショップで長峰さんがお話していたイタリアのアーティスト、ブルーノ・ムナーリさんの絵本。実物を持ってきてくださいました。

「ブルーノ・ムナーリさんはこういう風に、造形だけで見て楽しむような本だったり、その時の気持ちで感じ方が変わる絵本を作っています。」

さらに、「見せちゃうと引っ張られちゃうかもしれないのでチラっとしか見せませんが()」と、長峰さんのこれまでのワークショップの中で参加者の方が作った絵本も参考に少し紹介していただきました。

 「今後のことも考えてサイズは統一したいと思います。」

まずは長峰さんが用意した紙の中から好きなものを3枚と紙を綴じる紐を選び、製本をしていきます。

「カラフルなものから、今回大人の方が多かったので質感の面白い落ち着いた色の紙なんかも用意しました。」


たくさんの種類の紙を前に、どれにしようかな~と悩む場面も。
「あとから変えてもいいですよ~」と長峰さん。

 

同時に製本の方法も説明していきます。

まずは選んだ紙3枚を真ん中で半分に折り、どの色を何ページ目にするか考えながら重ねていきます。折り目のところで紐を結んで本を綴じますが、このとき本の角を5ミリから1センチほど切り落とすと、紐が引っ掛かって抜けにくくなります。

「大胆に角を落としたい方は、そうしていただいても大丈夫です!」


本ができた人から、前回の「点と線」の絵の中から使いたいものを、5点選んでコラージュしていきますが、「直感で!特につながりは考えなくて大丈夫です」と長峰さん。

「今回はページごとにまったく違う絵が出てきてよくって、そこのつながりを考えていくことが演劇の手法としては大事なことなんですよね。なので、全然違う世界をどう繋ぐかというのが今後のワークショップに生きてくると思います。」


そして参考として長峰さんからもう1冊絵本の紹介。


チェコの絵本作家クヴィエタ・パツォウスカーさんの絵本です。

ノートの切れ端とかのコラージュでできているんですけど、ほぼ絵だけで。内容は一応ヘンゼルとグレーテルですが、そう読まなくてもいいというか。そういう風にわりと自由に大胆にやっていってもらえればいいなと思っています。」

さっそく、材料となる「点と線」を選んでいきます。

迷わず手に取っていく方もいれば、じっくり考えながら選ぶ方も。

 

材料がそろったらハサミで思い思いの形に切って先ほど作った本に貼っていきます。

皆さん表情が真剣です。






少しずつ完成した方が出てきました。制作中の方は手を動かしつつ、完成した作品を長峰さんが紹介していきます。

「感じるがままに見て、次の時までに内容考えてもいいし、考えなくてもいいし。じゃあちょっと見ていきます。」

 

まずはものすごい勢いで作っていたこちらの作品。


「青い寒色系の色が素敵ですね。踊っているように見えますね。構成が意外とできていて、最初静かなシーンからはじまって、踊って激しくなってきて。ちょっと縄文っぽいですよね。あまり考えずにやりましたか?」

「考えてないです!」

「そこが面白いですよね。でもすごく集中してやっていましたね。」

 

最年少の部員さんの作品。

「何も言わずにとりあえず見てください…かっこよくないですか!?すごいですよね、点だけでやっているけど構成ができていて、最後黒に黒い点で終わるという…。楽譜にも見えるんですよね。色々な展開ができそうです。ちなみにどういうイメージですか?」

「爆発がテーマ。」

「それは確かに伝わってきます。再生だったり宇宙だったり生命の誕生とか…。次回朗読を楽しみにしています。お母さんが読んでもいいかも。」

 

続いてはこちらの作品。

「トリミングに自分のルールがあって、色もご本人っぽいですよね。少しなつかしさというか、江戸時代とか古い時代のゆるい漫画っぽい。選んだ柄も、線や三角の繰り返しだったり、丸、三角、四角で構成されていたり、読む人が想像しやすいのかな。」

「これは自分で描いた絵を選んだ…はず。」

「そうしたら純粋にご自身の本ですね()

 

こちらの部員さんは製本の紐を編むことから始めていましたが…

「出来ているじゃないですか、流石ですね!紐を三つ編みにするという…やりたかったら真似して差し替えてもいいですからね。製本の紐が既におしゃれ。コラージュも潔いというか、スッとしていますよね。わざと貼らなかったりとか、点と線だけでまとめていて。一緒に旅しているみたいでちょっと可愛いですよね。」

 

次の作品は、コラージュの方法が特徴的です。


「テクスチャーや、しわを生かして立体っぽくなっています。このページからは折って貼って1枚の巻物みたいですよね。不思議でおもしろい。花のようだと思ったら最後はサボテンや、不思議な生命に見える。最後はゴージャスにちょっと飛び出していて。」

 

今度の作品は、もう少しで完成。


「これも表紙かっこいいですよね。中はしかけ絵本みたいになっていて、こんな感じで広がるような。こういう飛び出す仕掛けも面白いですよね。空間でそのまま装置になりそう。完成楽しみにしています!」

こちらも、あと少しで完成。ちょっと見せてもらいました。


「これもすごくかっこいいんですよ。四角い漫画的なトリミングだけどもう少しミニマルな感じ。選んでいる色もかっこいいですよね。美術館の絵を見ているような感じで素敵です。」

 

最後はこの作品。

「始まり方がすでにかっこいいですよね。1個の点から始まって・・・。これは流れを考えながら作りましたか?」

「はい。

「想像しやすくて優しい本ですね。最後がきれいです。何かテーマとかありますか?」

「展開考えながらやったので一応ストーリーがあります。」

 「えぇ~!良かったら読んでみますか?」

ということでご本人による発表~!


“はじまりがありました。
 はじまりは、はじまりだけだと
 はじまりだとわからないので、
 じぶんをりゅうしゅつさせることにしました。
 どどどどど。
 そしてこんとんがうまれて、おわりができたときに、
 はじまりは、はじまりをしりました。”

すごい!

「ちゃんと絵本ですね‼」と長峰さん。

「こんな感じで読んでもらってもいいし、オノマトペとかでも大丈夫です。自分の中で持っていてもらえるといいかなと思います。」

 

制作途中の絵本は持って帰って、続きを作ることに。

次回の127日(金)は演劇ワークショップ①。講師は演劇家の柏木陽さんです。今回の絵本がどう変化していくのかお楽しみに!

さらに210日(金)には長峰さんと柏木さんお二人が講師で、舞台美術と演劇の合同ワークショップが行われます。

次回もまた、クラブ活動でお会いしましょう!

(マネージャー・まりこ)


* * * * * * * *

2023年1月19日(木)舞台美術ワークショップ②
講師インタビュー

「長峰さんに聞く!」


―「プロのあたまの中、見てみたい!」ということで毎回お話をうかがっていこうと思うのですが、今回は……
(長峰)参加者のみなさんのあたまの中が、すごい!感嘆! 一人ひとりのおもしろさが出てました。舞台っていろんな人のアイデアでできているものだし、外からの刺激をどう自分のなかで消化していくかっていう部分があるんですけど、突き動かされるというか、わたし自身が参加するみなさんからすごく刺激をもらってます。

―長峰さんがみなさんの作品をすごくおもしろがって見てくださっていて。
(長峰)ほんとに純粋におもしろいなって。同じ素材でやっていても、選ぶ紙が違って、貼り方も違って、もうみんな全然違う。隣同士でも全然違って、でも刺激されて取り入れたり。同じ空間でやってるとそこがおもしろいですね。
まず、紙の上にひとつ置いて、何かが見えてくる。自分のなかになにかが生まれてくる。そんなふうに手を動かしたり体を動かしたりして、いったりきたりしながらやってみる。「こうやりたい」っていうものより、失敗した形のほうがおもしろかったりする。そこを拾っていくのがクリエイションでは大事かな、と。想像をこえたもの、無意識にできたものから拾って、そこで構築していくほうが思いも寄らない発見がある。段階をふむのも大事だけど、変な失敗から「あれ?」っていう。生きるっておもしろい、ですよね。
相手からでてきたものを、認めるというか、楽しむのが大事だなって。「おもしろい」って受け入れる器。舞台美術って器みたいなもの。いろんな要素がまざってできてくるものだから。今、みんなでいっしょにつくっているのも、舞台美術をつくる過程と同じですよね。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。